2023年5月6日土曜日

4月に読んだ本

 4月に読んだ本

もう5月に入ってしまいましたが、Better late than never ということで、4月に読んだ本を振り返ってみましょう。

1  十五の夏(下) - 佐藤優

3月に読んだ上巻の続きで、こちらはソ連の旅がメインです。モスクワから、当時はソ連領だった中央アジア(現ウズベキスタン)のタシケントやブハラ、サマルカンドを経由して、極東のナホトカから船で横浜に帰国するという旅行の詳細が描かれています。旅に出る前にソ連のことを調べる途中で知り合った人たちのことや、当時の日本とソ連のつながりなどにも大きくページを割いていて、のちに外交官となる著者の基盤はこの旅の前から築き始められていたことが伺われます。物事がスムーズに運ばなかったり困難に直面した時に気弱になったり泣いてしまったりするところに15歳の少年の素顔が垣間見られるものの、物事への好奇心や洞察力は並外れていて、大物になる予兆を感じます。15歳の息子にこの旅を勧めたご両親も先見の明のある人たちだったのでしょう。「かわいい子には旅をさせよ」を具現化した本でした。(関係ないけれど、ブハラやサマルカンドってどこで聞いた地名だったっけ?と思ったら、少し前に読んだジンギスカンの伝記でした)

2. 絶歌 元少年A

は超優秀な15歳の紀行文でしたが、こちらは14歳で道を誤ってしまった人の手記です。いつだったか、知人と話をしていた時に、サイコパス(という言葉が正しいのかどうかはわかりませんが)は完全に更生できるのかという話題になったのだけれど、それからしばらくしてこの本をネットの図書館のようなところで見かけて、ちょっと興味を持ったのでした。元少年Aとは、言わずと知れた「神戸連続児童殺傷事件」の加害者ですが、その加害者本人が事件前のこと、事件のこと、少年院でのこと、出所後の生活などを綴っています。非常に生々しい描写があるため、万人向けの本とは言い難いのが正直なところです。少年院にいた頃やその後もかなり多くの本を読んだという記述があり、この手記も小説のような文章で書かれています。村上春樹が好きだというのがよく分かるような比喩が至る所に使われていて、その比喩の多さに私は物凄く違和感を覚えました。これは小説じゃなくて手記なのにと。本文のなかにも一連の事件をフィクションのように捉えていたというような記述があるのだけれど、特に前半は部分的に自己陶酔とも思えるような描写が多いのが気になりました。この人はおそらくとても頭がよく根も真面目できちんとした人なのだと思うけれど、心の中にいろいろな葛藤やモヤモヤをかかえているんじゃないかという気がします。どうしようもない心の闇を一生懸命押さえつけて生きているのだろうと。最後は読んでいて切ない気持ちになりました。

3. 春の庭 柴崎友香

今年は小説をあまり読んでいないなぁと思い、なんとなくこの本を図書館で借りてみました。この作者の本は今までに読んだことがなかったのだけれど、芥川賞受賞作というので、何かしら感じるものもあるだろうと思って。「春の庭」という写真集に載っていた家とそれを取り巻く人間関係が静かに描かれています。あまりにも淡々とした物語で、きっと何かがあるんだろうと思いながら読み続けたものの、「転」の部分があったのかなかったのか。この小説のどこがそんなに評価されたんだろう、と私のような凡人にはよく分かりませんでした。芥川賞受賞作にはよくあることですが。

4. Spare  - Prince Harry, The Duke of Sussex

あはは、なんとタイムリーな。話題のこの本が発売になった後、興味本位で図書館の電子書籍を調べてみたら、発売後数日しかたっていなかったのに、順番待ちがSeveral months(半年ぐらい)になっていました。買うつもりはなかったので、とりあえず順番待ちをクリックしておいたら、忘れた頃に順番が回ってきました。でも随分早かった気がします。みなさん、待ちくたびれて買ってしまったのか、興味を失ってしまったのか。はい、この本は、ご存知の通り、ヘンリー王子の自伝です。噂では王室のいろいろなコトを暴露しているという話でしたが、ヒドイ本ではまったくなく、なかなか良い本でしたよ。彼のことを一言で表すならば、「やんちゃで寂しがり屋の王子様」でしょう。本当にまっすぐで、ポジティブな人なんだな、と思いました。王室とのイザコザも世間で言われているほど悪質なものではなく、タブロイド紙やパパラッチを含むメディアの執拗なおっかけに対応してほしいと王子が王室に働きかけても、担当者たちは何もしてくれないどころか、メディアに情報を横流ししているということに不満を抱えた王子が、メディアの目の届かない場所でリモートワークをしたいと申し出たら、それは却下され、現状維持か王族の権利放棄というAll or nothingの選択肢を迫られ、権利放棄を選んだということのようです。メディアへの憎悪は全編を通して述べられています。この部分やウイリアム王子に殴られたということなどばかりが大々的に取り上げられているけれど、本を読んだ限りでは、よくある家族のいざこざや兄弟げんかと変わりないようにも思えます。ただそれが、王室の出来事だったというだけで。それにこの部分は最後の何十ページのことで、400ページもあるこの本には、ヘンリー王子のやんちゃな学生生活や友達のこと、アフリカでの支援活動や家族同然の友人たちのこと、軍隊生活や戦場でのこと、過去のガールフレンドのことやメーガン・マークルとの出会いとその後など、彼のこれまでの人生が事細かく描かれています。そしてそのすべてにダイアナ妃への思いが詰まっています。今朝、戴冠式に出席していた王子が、式を終えて退場する国王に黙礼をしていた姿が印象的でした。彼にとって国王はこれからもずっとPaなんだろうな、と。意外にも和訳本は出版されていないそうです。

   

 Spare (English Edition) by [Prince Harry, The Duke of Sussex]

4 件のコメント:

  1. Jさん、忙しい中もしっかり読書の時間をとって 生活のバランスを保っていて偉いと思います。 バランスってほんと、大事ですよね。 時間管理がいまいちできていないというか、一挙一動がスローになって料理にもお掃除にもなんだか前よりも時間がかかるようになってきたような気がしています。最後に一冊の本をしっかり読んだのはいつだろう。。。
    一五の夏、本人もすごいと思うけど、ご両親はもっとすごいと思うな~。私なんてTが15の時に日本からアメリカのカリフォルニアとアリゾナに一人旅するだけでも(それも知り合いのところへ)ドキドキで何かあったら。。。と心配したほどだったのに、この少年は一人で言葉も通じない国々を転々と旅するなんて。。。 旅する本人を信用してないのではなく、周りを信用していないのです。特にアメリカではトラフィッキングの問題もあるしね。 でも その経験は一生の宝だよね、きっと。 私自身ひとりで海外旅行さえしたことがないから憧れはあります。 ハリー王子の本に関しては私は読んではいないものの、その前にプライバシーを尊重してほしいと訴えながらも 夫婦でネットフリックスと100億ドルの契約をしてプライベートな事を色々としゃべったり、本の出版で書く前から50億のDealだったりとか、本当に何がしたいのかわからないというのが私の思うところです。ごめんなさい、ネガティブで。。。

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    1. 図書館の本は返却期限があるから、読み終わらないうちに期限が来ちゃったなんてことにならないように頑張って読んでいます。Gyao!が3月末でサービス終了になってしまって、最近あまり韓国ドラマを見ていないから、読書の時間が少し増えました。
      15の夏は、自分が15歳だった時と比較しても、こんなことを考えていた15歳は周りにもいなかったなと思いました。でも、確かに、今、15歳の子を一人で旅に出すのは、1975年よりずっと危なくて心配かもしれません。当時のソ連は治安のよい国と言われていたんだそうですよ。親としては、子供にはいろんな経験をさせたいけれど、安全の確認がまず第一条件ですね。
      ハリー王子は、私もZiggyさんのように思っていたのです。ただ、私たちがメディアから得ている王室の情報もかなり歪んでいるのだということがこの本からも分かるし、メディアのウソではなく、自分の口から本当のことを伝えたいという思いがかなり強いんだと思います。そのうえ、チャールズ国王から生活資金とボディーガードの提供を切られてしまって、一文無し同然になっちゃったんでしょうね。本を読んだらいろいろなコトの真相がわかりました。たぶんハリーは今がいちばん幸せなんだと思います。王室との亀裂とかなんとか言われているけれど、ずいぶん家族愛にあふれた本でしたよ。

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    2. そうだよね~。 メディアの言う事、書くことを真に受けてはいけないよね。。。 私も買って読む気にはならないけど図書館のデジタルブックで探してみようかな? というか 図書館のアカウント、もう何年も使っていないから使えるかどうかもわからないくらい。。。チェックしてみなきゃ。

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    3. デジタルブックなら実際に図書館に行かなくても家ですぐに借りられるから便利だよねー。図書館によってはデジタル版の雑誌を借りられるところもあるし、買ってまでは読まない本を読むのは、やっぱり図書館が一番。人気のある本は待ち時間が長いのが難点だけど。

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