先日、この記事を書いて、一度はアップしたものの、こんなにネガティブな感想をわざわざ載せる必要があるだろうかと思い直して、下書きに戻しました。でも、このブログは自分の記録でもあるし、後々、あの時はこんなことを考えていたんだと振り返ることができるように、再びアップすることにしました。それに、この映画は高評価ばかりじゃないということも分かったので。
******************
Netflixで新作の「西部戦線異状なし」を観ました。
最近は2時間一気に映画を観るのが難しく、新作ラインナップに出てきていたのは知っていたけれど、後回しにしていました。先日、アカデミー賞のノミネート作品が発表になった時に、この映画が多数の部門にノミネートされているのを知り、これは早く見なければと思い立って、週末に見ることにしました。
「西部戦線異状なし」にはちょっとした思い出があります。小学生の頃、おそらく日曜日の昼間、祖父母の家の居間で遊んでいた時に、テレビで「西部戦線異状なし」が放送されていました。私はレゴか何かで遊んでいてテレビを観ていたわけではなかったのだけれど、白黒の映画で、戦争の映画だということは分かっていました。ストーリーは全く理解していなかったものの、そのラストで、主人公が戦場で蝶に手を伸ばして撃たれてしまうというシーンと、それに続く、「西部戦線異状なし」という字幕だったかナレーションだったかが、ずっと心に残っていました。もう少し大きくなってから、それに原作本があるということを知ったのだけれど、当時は翻訳本が大嫌いで、結局読むことはありませんでした。
もともとはドイツ語の小説ですが、ずっとずっと大人になってから英訳でこの本を読み、これまでに制作された1930年版(小学生のときに見た映画)と1979年版の両方の映画を観ました。そして今回のNetflixの映画が3作目です。
結論を言ってしまうと、新作は残念の一言です。
原作のあらすじは、第一次世界大戦がはじまり、ドイツの青年たちは勇んで軍隊への入隊を志願し、主人公とその同級生たちも同様にドイツ人としての誇りをもって入隊を志願するものの、現実は想像とはかけ離れたもので、友だちや戦友を失うことや敵の命を奪うこと、戦争そのものの実態が主人公の心を次第にむしばんでいく、というストーリーです。
新作は、映像の美しさや迫力という点では確かに過去の作品よりはるかに優れていると思います。これが「西部戦線異状なし」というタイトルでなかったら、戦争映画として受け入れられたかもしれません。でも、今回の新作は、原作の一番大事な部分、主人公の心の変化の描写が単純すぎました。例えば、穴の中で自分が刺した瀕死の敵兵と一夜を過ごす(原作では)場面、例えば、負傷した戦友を負ぶって昔話をする場面は、あまりにも淡々としているうえに、帰省して故郷の周囲の人や教師に違和感を覚える場面に至っては、完全に削除されていました(大事な部分なのに)。原作にはない停戦の話も、停戦予定時刻の数十分前に攻撃命令が出て戦死した兵士たちがいたことは真実だけれど、原作とは関係のないそちらがメインになってしまった感が否めないのは残念です。戦争が兵士たちの心をどう変えていくかということをもっと前面に出してほしかった。戦争の悲惨さは十分に伝わってきますが、登場人物たちがただただ茫然としてしまっているだけのように見えて、「西部戦線異状なし」に似た別物を観ているような気がしました。3作目ともなると、前作との違いを明確にしたいという気持ちがあるのかもしれませんが、原作者が本当に伝えたかったことが有耶無耶になってしまったように思います。
本当の「西部戦線異状なし」を知りたい方は、まずは原作を読むことをお勧めします。